9月4日、私たちは横浜市会議長鈴木太郎殿に対して、標記の請願書を提出しました。請願項目は、「市会が改めて審議を深め、政府に対して団体自治を侵害し憲法が保障する地方自治の本旨に反する改定部分を削除し、国と地方自治体の関係を対等・協力に戻す再改正を求める。さらに再改正がなされるまでの間は政府が指示権を行使しないように求める」というものです。5月20日に提出した地方自治法の一部「改正」を廃案にする「請願」に続くものです。請願署名者には、5月の時の3倍の市民が名を連ね、紹介議員も一人増えて4人になりました。改定自治法によって団体自治が壊される危機に直面している現実に、カジノを止めた横浜市民は市民自治、直接民主主義の立場から、「市民自治の要」を標榜する市会に対し、警鐘を鳴らすことも狙いのひとつです。9月9日には、記者会見を行いました。9月10日付の神奈川新聞に掲載されました。
請願書
2024年(令和6年)9月4日
横浜市会議長
鈴木 太郎 殿
請願者 住所 神奈川県横浜市港北区綱島東5-22-22
氏名 倉田 謙
ほか122名
紹介議員 井上さくら 大田正孝 大野トモイ 白井正子(自筆署名印)
件名 国に対して第213回国会で成立した改定地方自治法の改正部分の廃止(再改正)を要請する等の意見書の提出を求める請願
請願項目 市会が改めて審議を深め、政府に対して団体自治を侵害し憲法が保障する地方自治の本旨に反する改定部分を削除し、国と地方自治体の関係を対等・協力に戻す再改正を求める。さらに再改正がなされるまでの間は政府が指示権を行使しないように求める。
請願の理由等
1、私たちは、横浜市会第2回定例会に際し、地方自治法一部改正案を廃案にする意見書を国に提出する請願を行いました。その中で、「改正法」で創設された「国の補充的な指示」を含む特例関与は、「団体自治を侵害するものであり、憲法で規定された地方自治の本旨に反し、国と地方の『対等・協力』の関係を『上下・主従』の関係に後戻りさせるものと言わなければならない。」と問題の重大性を指摘していました。(5月20日受付の「請願」は別紙資料を参照願います。)
2、しかし、本改正案の国会審議と可決の過程を通して、私たちが危惧していた問題点が解消されないばかりか、いっそう浮き彫りになったと言わざるをえません。
松本総務大臣の答弁は、関与の法定原則主義どころか「想定できない事態とはなにか」の質問に対し「想定できない」と繰り返すばかりで、まさに詭弁の最たるものでした。国に強大な権限を与える法改正の根拠となる立法事実はどこにあるのか、何一つ具体的事例を示すことが出来ず、政府としての説明責任をまったく果たすことができませんでした。
にもかかわらず、改正法によって2000年施行の地方分権一括法で規定された、国と地方の「対等・協力」の関係が、戦前・戦中の「上下・主従」に逆戻りすることになるという、私たち市民を含む各界、野党などによる強い社会的批判については、何の根拠も示すことが出来ないまま、「そんなことはない」と強弁し続けるだけでした。
3、私たち市民は、こうした無責任極まりない政府答弁による国会審議を経て成立した本改正法を断じて認めるわけにはいきません。
改正法が実施されるなら、政府が「重大な事態」と認定すれば、「国の関与を定めた個別法がない事態」「自治事務」をも含むすべてに対して、広範囲かつ自在に国が自治体を指揮命令下に置けることになります。いわば自治体の国に対する「白紙委任法」というべきで、地方自治を根底から否定するものと言わざるをえません。
市民の立場からすれば、地域から遠く離れた国が自治体との連携・協力なしに、適切な「指示」を出すことができないことは、自らの経験を通して知っています。たとえば、2016年4月の熊本県地震の時、益城(ましき)町では、国の要請を拒否して、地域の事情を知る町長が自主的に適切な判断したことで重大な災害に至るのを回避できました。また、新型コロナ対応では、国による全国一律の一斉休校やアベノマスクの全戸配布など、市民、国民の不安と不信を招くばかりでした。他方で、PCR検査では問題も起こり、現場を預かる地方自治体の方が国に一歩先んじて適切な対応を行った例もありました。改正法が実施されれば、こうした犠牲を払って得た貴重な地方自治体の教訓はまったく無視され、現場から離れた主観的な国の指示がまかり通ることになります。
さらに私たちは、改正法の上程、審議、成立の過程を振り返るとき、そもそもなぜ今このような改定が必要なのか、深く考えさせられました。戦後、憲法に規定された民主主義の要、地方自治制度を根底から否定するような国家的関与を必要とする時代に突き進んでいるのではないか。端的に言えば、戦前東条内閣が「戦時行政特例法」を制定し、中央集権を強化して、戦争に突き進んだ時代を想起せざるをえませんでした。
本改正法は、「緊迫化する安全保障環境」を理由に、政府が憲法に創設しようとしている有事の際の「緊急事態条項」の先取りではないかとの疑念を禁じえません。
結論として、私たちは本改正法を憲法に保障された地方自治を破壊する、国による歴史的な暴挙と受け止め、地方自治の主体である市長、市会、市民が危機意識を一つにして、これに抗する意思を固める時と考えます。
4、私たちの認識からすると、市会第2回定例会における地方自治法「改正案」、ならびに私たちが提出した「請願」に関する審議は、事の重大性に照らしてあまりにも不十分であったと言わざるをえません。
そこで私たちは、本改正法が実施されれば、地方自治はどうなるか、そこに暮らす市民の生活と権利、市民自治はどうなるのか、それらの運命に思いをいたして、改めて市会としての審議を深めるよう求めるものです。
そのうえで、最大の基礎自治体の議会として、政府に対し市長と連携し改正部分、とりわけ特例関与に関する規定を削除して再改正を求めるとともに、同規定が廃止されるまでの間、政府が本改正法に基づく指示権を行使しないよう求めるべきです。
以上の趣旨で、地方自治法第99条の規定により国に対して意見書を提出されるよう請願します。
以上
コメントを残す