第3回山下ふ頭再開発検討委員会に対する意見


「山下ふ頭の未来」部会では、4月8日、第4回部会を開催しました。

1月12日に開かれた第3回検討委員会に対して市民の意見としてどんな論点で臨むべきか

以下の5点を中心にを議論しました。

1、市民有志がまとめた提言書を検討委員会がきちんと扱うようにすること

2、「開発推進派」のプレゼンに対して市民の立場から批判すること、その内容

3、「横浜のまちづくり」(都市計画マスタープラン改定版)と山下ふ頭再開発との関係を問う

4、山下ふ頭のあり方については、港湾局では無理で、全庁的体制をとること

5、ノース・ドックへの新部隊本格配備を中止し、早期返還を求める態度を「答申」に入れること

 この議論を受け、さらに調査・学習を重ね、部会責任者の中村が検討委員会に提出した「意見」

を、以下に掲載します。

第3回「山下ふ頭再開発検討委員会学識者会合」を傍聴しての意見

       ヨコハマ市民自治を考える会・「山下ふ頭の未来」部会

          中村寛三 Email:zhoncunkuansan@gmail.com

 第3回検討委員会から、4か月が経った。第3回会議は、地域経済団体の委員が初めて参加する会合になり、委員のプレゼンも経済を重視して積極的に再開発を推進すべきという意見が出されたのが特徴だった。ただ、この期間にはいわゆる予算議会があり、山下ふ頭の問題でも市会本会議および委員会での質疑がなされた。また注目すべきは、山下ふ頭のあり方について市民サイドから提言書が発表された。いずれも第4回会議以降の議論を進めるうえで考慮すべき重要な事案である。今回は、それらも踏まえて感想、意見を述べたい。

1、第1番目に今村委員のプレゼンについての感想、意見を述べる。

渋谷再開発にも関わっていると思われる東急総研会長が山下ふ頭の再開発についてどのような「方向性」を提示するか、大いに関心を持って繰り返し聴いた。委員の言わんとするところは、「東京圏の都市開発と横浜~新しい流れに沿って~」というタイトルに集約されていると感じた。まず、最近の東京圏の都市開発は、人口急減時代におけるものであり、過去の人口急増時代のものとは大きく変化していると指摘された。すなわち、都市開発の「目的」については、「国際的な交流人口を吸引し、地域経済の活性化を誘発する」ことであり、また「資金集めの方法」も、「国際的な投資資金を主役に吸引」できるようになった。したがってもっとも重要なことは「プロジェクトの事業性において説得力ある開発ストーリーの組み立て」であるとして論を展開された。東京の大規模再開発をけん引しているシンクタンクの会長らしく、自信に満ちた率直なプレゼンだった。

だが結論的に言って、今村委員が提示された「方向性」に沿って山下ふ頭が再開発されることになれば、短期的には地域経済にいくらか刺激にはなっても、市民が誇りとする「横浜らしさ」は壊され、市民生活の豊かさなど実感できない、持続不可能な都市に変貌するのではないか、市民意見募集の結果に示された市民の願望に反するものにならざるをえない。大きな危惧を持たざるをえなかった。

なぜなら第一に、開発の「目的」については「地域経済の活性化を誘発する」と言うが、そもそもどのような都市づくりを目指すのか、肝心な「理念」については全く述べられていない。この点に大きな違和感をもった。

戦後の横浜の都市(まち)づくりは、1963年の飛鳥田市政時代から始まる6大事業を軸に、「都市デザイン」としての展開も含め50年以上の歴史を持つ。飛鳥田市政は「国際文化管理都市」という新しい都市像と、「誰もが住みたくなる都市づくり」「市民による都市づくり」という明確な理念を掲げ、6大事業のプロジェクトを市民に示して、市民と共に横浜をつくってきた。そのために、市民向けのパンフレットをつくり、議論し、周知した。それは高度成長期、人口急増期の都市づくりの先進例として全国的な評価を受けた。北山委員の都市デザインのプレゼンでも強調された通りである。

それゆえプロジェクトに直接参画した人々はいうまでもなく、多くの市民がこれまでの横浜の都市づくりに愛着と誇りを感じているのである。そこへ国政を握る「ハードパワー」がカジノ誘致を強引に進め、「横浜らしさ」を台無しにしかねない挙に及んだ。横浜市民は怒り、市長選挙で「鉄槌」を下した。それを一部の委員が言うような「ボタンの掛けちがい」などと曲解されてはたまらない。

こうした体験をもつ市民が、検討委員会のメンバーに対して、これまでの横浜の都市づくりをどのように評価しているのか、これからの都市づくりはどのような「理念」でやろうとするのか、大きな関心をもつのは当然であろう。

だが、今村委員は、こうした市民の関心に真っ当に答えていない。「国際交流都市を先駆けた160年の歴史」も「独自の都市文化」も、「説得力ある開発ストーリー」の宣伝文句にすぎず、いわば刺身のツマのようなものでしかない。少し考えれば解ることだが、「資金の主役に吸引」しようとしている「国際資本」にとっては、「事業性」つまりは金儲けになるかどうかがすべてである。これまでの横浜の都市づくりの歴史も、これからの「理念」も、そこに住む市民の生活など眼中にないのである。生き馬の目を抜くような貪欲な「国際資本」、ヘッジファンドは、金もうけできると見るやリスクをとって投資するが、そうでなければ投資せず、投資していても瞬時に売り飛ばす。山下ふ頭の再開発はそうした金融商品の一つにすぎない。

そうした「国際資本」の投資に頼るという今村委員が、都市づくりの「理念」を語れないのは、当然ともいえよう。

●第二に、そうした「国際資本」頼みの、「理念なき」都市開発はどのような都市に行きつくか、われわれはさらに問わねばならない。

結論から先に言えば、「国際資本」頼みの大手デベロッパーのなすがままにつくられる都市は、「短期的利益の最大化」が目的である以上、経済的合理性の圧力がかかり配置が「適正化」され、多様性のない画一的で、どこにでもある都市に変貌せざるを得なくなる。論より証拠、今村委員がかかわっている、東京都心部における大規模再開発の現実がそれを物語っている。

2023年12月31日付の「東京新聞」は、一面トップに「東京変貌 100年に1度の再開発」の見出しで、その様子を掲載している。オリンピックを機にギアチェンジした「東京大改造」は、昨年も続き「羽田イノベーションシティ」が全面開業、330メートルの日本一の高さを誇る「麻布台ヒルズ・森JPタワー」がオープンした。今年に入って、築地市場跡地の事業者選定、「渋谷サクラステージ」の全面開業、常盤橋─日本橋川、日比谷公園周辺、中野サンプラザ跡地など、2024年以降に計画される6つの再開発計画が動いている。今村委員によれば、2050年までの計画があるという。

だが、こうした再開発によって、いったいどのような都市ができつつあるのか?検証してみると、東京都心部は廃都に向かって盲走しているとしか言いようがない深刻な事態が進行している。短期的には「事業主体の大企業にエリア価値向上や経済活性化などの恩恵」をもたらしているが、引き換えに都民生活の豊かさや地元の営業が犠牲にされ、東京のこれまでの魅力が失われ、高層ビルが林立する単調で持続不可能な都市へと変貌しつつある。

それはなによりも、地元住民の激しい抵抗が物語っている。明治神宮の森の伐採に対する幅広い反対運動をはじめ、秋葉原の電気街や板橋区の大山商店街など住民が反対運動に起ちあがっている。都民は環境破壊に対して、生活の豊かさや営業が奪われることに怒り、民主主義、市民自治に反するトップダウンの進め方に怒り、東京の魅力が壊されていくことに怒っているのだ。

より深刻なのは、人口急減時代にあって東京が「ブラックホール型」都市に陥っているという事実である。「人口戦略会議」の報告書が警告した。2050年には全国自治体の4割が「消滅可能性自治体」になるとの予測と併せ、東京23区のうち16区において若年女性人口の減少率が50%を超え、出生率も低く、他都市からの人口流入に依存しなければ持続できなくなる自治体と発表された。都心部で「短期的利益の最大化」を追求する大規模再開発の帰結である。それは、人口急減時代に東京一極集中、地方衰退の日本の国土政策が持続不可能な危機に直面していることを示す新たな指標である。

さらに深刻な事態は、供給過剰による都心部におけるオフィス賃料の低下と空き室率の悪化にも表れている。空室率はすでに危険水域の5%を超えて6%台となり、27年には7・2%まで悪化するとの予測もある。不動産(オフィス)市場そのものが崩壊の危機に直面しているのだ。

以上の検証からでも、都心部で推し進められている大規模再開発の行き着くところは明らかである。人口急減時代、加えて「地球沸騰」の時代に人が安心して住める都市として生き残るのは到底無理である。

今村委員が提示された「方向性」に沿って山下ふ頭、まして横浜のグランドデザインを再調整して都市再開発を進めるなら、東京都心部の再開発の「新しい流れ」が行き着くところと同じようなものにならざるをえまい。その流れに取り込まれ、競争に勝ち残ったとしてそれは、横浜市民が望む都市とは真反対のものである。

●第三、今村委員のプレゼンは図らずも、これからの都市再開発を誰が何のために進めるのかという根本問題を焦点化させた。

20年前から、「不動産の証券化」の制度創設(J-REIT)によって、海外投資家がわが国の都市再開発に自由に投資できるようになった。この投資マネーを「主役に吸引する」、これがミソである。

今村委員は、それによって自治体財政に負担をかけない、資金集めの方法が見つかった、最近の東京大規模再開発は彼らによって支えられていると自慢げに報告された。

だが、国際的資本の投資マネーを吸引すればするほど彼らの発言力は増し、主役となって都市再開発を推し進めることになるのは明らかであろう。すでに海外の投資家、ヘッジファンドは、年間4兆円にものぼる事業用不動産市場のうち1兆円を投資していると言われている。彼らは、欧米諸国に比して開発規制が緩く、大規模金融緩和で円安が続く東京圏を最大の獲物と見て、投機マネーを集中しているのだ。

だが、批判されるべきは彼らだけではない、東京都心部の再開発を推進している中心は、自らも不動産投資ファンドをもつわが国の大手デベロッパーである。彼らは、世界的に新自由主義が横行し始めた1980年代から中曽根「民活」を受けて都市開発の分野に参入し、2000年代初めには、小泉政権の「官から民への改革」の流れに乗って主役に躍り出た。安倍政権の「日本再興戦略」ではさらに勢いを増し、今日の東京大改造の主役を担っている。三井不動産、三菱地所、東急不動産ホールディングス、住友不動産、野村不動産ホールディンクス、森ビル、等々である。

さらにわれわれはもう一つの元凶をあげなければならない。これら大手デベロッパーの意を受けて政治、制度面でバックアップしてきた歴代政権と、それに追随した東京都政である。彼らがどんなやり口で次から次へと、都市計画、建築規制を緩和、撤廃してきたか、筑波大学研究グループがまとめた『協働型都市開発』に詳しい。1980年代の中曽根政権の「アーバン・ルネサンス計画」「首都改造計画」による「国有地の民間払い下げ」「高度利用による容積率緩和」から始まって、2000年代の小泉政権による「都市再生特別措置法」、「都市再生緊急整備地域」等を経て、安倍政権による「世界と戦えるための国際都市の形成」「国家戦略特区」と段階を画して「大胆な規制・制度の緩和」を推し進めた。加えて、手厚い「税制の優遇、金融面から支援」も図っている。

東京都政、とりわけ石原都知事から小池都知事に至る都政は、国政でのこうした特例制度・特別措置を最大限活用してありとあらゆる方策を駆使し、大手デベロッパーに法外な「便宜」を図った。結果、「国家戦略特区」割増容積率の中央値は600%にまで跳ね上がり、870%、高さ360メートルの超高層ビルも計画されている。当初、容積率拡大の制約条件でもあった「公共貢献」は、限りなく多様化し、大規模化し形骸化している。米欧諸国では、開発地域における市民が入手しやすい「アフォーダブル住宅」の建設などが義務づけられているが、日本にはそうした規制もなく、タガが外れる一方である。

ここで横浜市もすでに、その方向に踏み出している事実を指摘しておかねばならない。2002年の都市再生特別措置法を受けて2003年以降今日まで、みなとみらい21地区を中心に高さ100~200メートルを超えるタワーマンションが20棟以上も乱立し、スカイラインを壊し、横浜を象徴する3塔が海から見えなくなっている。唯一の「既存計画」として提出された「都心臨海部再生マスタープラン」は、2014年の「国家戦略特区」の指定を受けて計画された。

以上から、この40年間、東京都心部の大規模再開発を推し進めた人々と都市の実相が明らかになった。論を戻すと、今村委員はこうした人々、集団によって山下ふ頭、横浜の再開発を推し進めるべきだと言っている。「市民参画」は、全くのお題目に過ぎない。

そういう意味で、今村委員のプレゼンは、これからの山下ふ頭、横浜の都市づくりを誰が何のために進めるのかという根本問題に違いがあることを焦点化してくれた。

カジノを止めたわれわれ市民の態度は、明快である。今村委員が連携する人々、集団に都市づくりを任せるわけにはいかない。われわれはこれまでの横浜の都市づくりに「横浜らしさ」の愛着と誇りをもち、知見と力を持つ市民参画によって、歴史的転換期にふさわしい市民生活の豊かさが実感できる、持続可能な都市づくりを推し進める、これが回答である。

検討委員のすべてのメンバーは、立場を明確に示していただきたい。

ほかに今村委員は、山下ふ頭の再開発の検討に当たって広い視野で臨み、横浜の都市像、グランドデザインが必要であること、したがって、港湾局だけでなく、横浜市が総力を挙げた体制で取り組むべきことなど発言された。立場は異なるが私もその部分には同感で、第1回目の検討委員会に対する意見から述べてきている。この点も付け加えておきたい。

2、2番目にアトキンソン委員のプレゼンについての意見だが、長くなったので別の機会に述べる。

ただ、彼のプレゼンにもこれまでの横浜の都市づくりについての評価も、都市づくりの「理念」もなく、「経済合理性」だけが強調された。ここでは市民として批判的意見を持っていることだけを表明しておきたい。

3、横浜商工会議所の坂倉委員の意見書についても、別の機会に譲りたい。

ここも一言だけふれる。今回説明された6項目の要望は、一昨年6月20日に横浜市に提出されたものだが、全体の前置きとして「統合型リゾート(IR)に匹敵する大型プロジェクトによる新たな産業振興が重要」と主張されている。そして「観光産業等のリーディング・プロジェクトとして、また、横浜経済のシンボリックな拠点となるよう推進していただきたい」という。これは、われわれが批判してきた「理念なき」山下ふ頭再開発の提案ではないのか。東京都心部のような大手デベロッパーや海外資本の再開発の「新しい流れ」に取り込まれ、既存の利益さえ奪われれかねない。横浜の経済人ならば、偉大な先人・原三渓の態度に学ぶべきであろう。彼は、関東大震災で横浜が壊滅的打撃を被る中で、「市民の力こそ第1」と言って、横浜復興の先頭に立った。その偉業は、三渓園と共に時代を超えて市民の心に残っている。こうした横浜の都市づくりに胸をはるべきだ。もう一度IRまがいを持ち出して市民の反感を買うようなことはしないで、市民と共に歩んでこそ道は拓けるのではないか。よく考えていただきたい。

4、今村委員のプレゼンへの意見の流れの中で、どうしても述べておきたい問題がある。

第3回検討委員会開催の後に発表された、市民有志による山下ふ頭のあり方についての提言書をどう扱うかという問題である。「みんなの山下ふ頭に〇〇があったらイイナ」プロジェクトが約370人余りの市民の参画、1年間の議論を経てまとめたものである。

2月下旬の発表と同時に、港湾局をはじめ横浜市長、副市長など行政幹部、それに市会議員全員に小冊子が届けられた。市民には、ホーム・ページを通じて紹介されている。3月15日の市会「国際・経済・港湾委員会」では、藤崎議員が提言書を紹介し、港湾局はどう受け止めたか、どう扱うか質問された。議員は「市民は検討委員会の席につけない。市民が意思決定のプロセスに入っていることが重要」と指摘し、「検討委員会と市民の意見をまとめるプロセスは両輪でやってほしい」と要望された。港湾局からは「スケジュールよりも、市民の意見・理解に重きを置いて進めないといけない」との答弁もなされた。市長記者会見でも、「検討委員会で提言書のプレゼンテーションをやらせることは考えていないか」との質問があった。これらは新聞でも報道されている。

提言書にかかわるこうした経過を共有していただいたうえで、さらに提言書の内容を紹介するのは、今村委員が示したものとは根本的に異なる「方向性」が提起されているからである。

提言書は、「市民の意志と力でカジノ事業を撤廃させました。その市民は、代替案を示す責任があると考えます」と、なぜ提言するに至ったか思いを述べるところから始めている。われわれは時に一部の委員のプレゼンを厳しく批判するが、それは決して批判のための批判ではなく、責任を果たそうとしていることを理解していただきたい。

そのうえで提言書は、開港以前からの先人たちの横浜の都市づくりの歴史を踏まえ、歴史的転換期、50年後の都市を「海と街の有機的なつながりを取り戻し、将来につづく、ゆたかな横浜」という明確な「理念」の下に創ると宣言している。「市民共創エリア」の具体的提案をした後、それを進めるために、「市民が考え、市民がはぐくむ、山下ふ頭の未来」という「方向性」を提言している。この提言書は、決して完成品ではない。たたき台として市民の広い知見を汲み上げる呼び水として発表されたものだが、注目していただきたいのは横浜市民は、このような提言書をまとめる知見と力をもっているという事実である。

寺島委員長は、第1回会合から「市民は意見を言うだけではなく、責任ある市民参画を」と強調された。提言書は、山下ふ頭の付け根部分に「市民共創エリア」をつくる具体的提案と同時に、その管理、運営についても市民の力を発揮すると明言している。

すでに検討委員会事務局の港湾局には、検討委員会が提言書をどのように取り扱うかを含め議題にのせるよう要望している。

寺島委員長の賢明な判断を待ちたい。

さらに、寺島委員長は、「検討委員会の役割は、付加価値を付けることだ」と発言された。私は、第3回会合までの各委員のプレゼン、とりわけ今村委員のプレゼンを聴いて、「誰のために付加価値を付けるのか」こそが検討委員会に問われているのではないかと考えるようになった。

これからの各委員のプレゼンとそれらを受けての議論が、さらに市民の提言内容を含めて、370余万・横浜市民の未来を切り開くものになるよう、違いを恐れず、真摯で自由闊達な議論が戦わされるよう大いに期待したい。

5、もう一つ、2月8日に瑞穂ふ頭のノース・ドックに米軍揚陸艇部隊の配備が本格的に開始された。年内に280人の米兵が配置される問題について検討委員会としての態度がとわれていると、述べておかねばならない。

この問題については、第1回会合に対する意見として述べたし、ほかの市民からも意見が出ている。だが、この期間に新たなより危険な方向に事態が進んでいるので、あらためて検討委員会のメンバーの皆さんに、共有すべき重大なファクトとして受け止めていただきたく意見を述べる。

米軍ノース・ドックは、横浜のインナーハーバーの「顔」に当たる瑞穂ふ頭にあるが、戦後78年間も長く占拠され続けている。海外大型客船も出入りする大さん橋に近接し、多くの市民が生活する都心部に隣接している。しかも、検討している山下ふ頭とは切っても切れない縁がある。というのは、米軍が「北風に強く」使い勝手のよい瑞穂ふ頭を使い続けるために、市民の返還要求に迫られて「代替ふ頭」としてつくられた経緯がある。朝鮮戦争、ベトナム戦争の時期には、米軍の一大補給拠点となり、横浜市が市民と共に戦場に送られる戦車をとめた経験もある。

昨年1月の日米2+2において、ノース・ドックが南西諸島と結ばれ、対中国戦略の軍事物資補給拠点として新たに配備されることが決定された。この2月に本格配備が始まり、横浜港が戦場になりかねないリスクを負うことになった。瑞穂ふ頭は、山下ふ頭よりも広く(52ヘクタール)、「活力ある横浜の大きなポテンシャル」を有し、行政、市会、市民が一体となって早期全面返還を求めてきた。その切実な思いを横浜港で働く労働者は、「平和でこそ港は繫栄する」という横断幕に書いて山下ふ頭の入り口に設置している。

この問題は国政の問題で当委員会が取り扱うべきではないとしたら、無責任のそしりは免れない。50年後、100年後の山下ふ頭、横浜内港の未来を議論する委員会として、横浜のまさに玄関口に米軍基地が居続けることを容認するに等しく、歴史に汚点を残すことにならないか。都市づくりの有識者としては矜持にかかわることである。ぜひとも検討委員会の「答申」に、「配備は中止、基地の即時返還」と書き込んでいただきたい。

                          以上。


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