〇横浜市総合計画案 市民討議きのう本番


 時間延長し熱っぽく                   神奈川新聞1973年8月27日

 昭和60年度の横浜をめざす「市総合計画案」は、今月12日の旭区を皮切りに、各区の各種団体代表者会議で〝市民参加〟の方策が練られていたが、一般市民が参加する〝本番〟の「あすの横浜を話し合う区民の集い」が、26日の旭区からいよいよ始まった。討論時間を2時間以上もとったためか、発言者も40人近い〝盛況〟ぶり。助言者が最後に「主催者は私たち区民。要望があれば何回でも集いを開きたい」と結ぶと、会場から盛大な拍手が沸き起こるなど、12日の代表者会議での〝討論完封〟を克服して、成功のうちに終了した。

「道路」「医療」で活発な討論

参加者の1割以上が発言

 午後1時すぎ、会場の旭公会堂は、区役所へ申し込んだ107人を含め、349人(男260、女89人)の区民で冷房もきかないほど。本田範雄世話人代表のあいさつ、スライドによる新総合計画の概要説明のあと、飛鳥田市長が計画案策定の経過、内容、財政問題での市民共闘、市民討議の位置づけなどを15分にあたって説明、特に計画を進める上での財政的裏付けについては「中央政府との交渉では、市民と共に闘い取る姿勢が必要」と強調した。

 そのあと区民の討論に入ったが、テーマが道路交通、保健医療、教育、交通体系の確立、都市施設の整備、ゴミ、水道─と7項目にわたっていたため、2時間の予定がさらに40分も延長された。十分に煮詰まらなかった都市施設の設備、ゴミ、水道については、次回(9月26日)の冒頭のテーマにする。発言者39人(うち女性)の主なものを拾ってみると─。

 医者と〝患者〟の討論も

 国道16号、県道横浜~厚木線という渋滞で〝有名〟な二本の幹線が区内を走っているせいか、道路・交通・交通体系の確立に対する発言者が最も多かった。「隣の戸塚、緑区へ行くにも横浜駅を経由しなければならず、これではマイカー自粛など無理。ぜひ地下鉄を縦横に通してほしい」「車を売るなというのはかなり無理なので、強力な規制が必要」「いや、車に合わせて道路を造っていたのが根本的な誤り。自動車生産を規制すべきだ」「バイコロジーも結構だが、人間が安全に歩けるよう歩道などを整備すべきだ。歩車道が分離したのは、16号だけという現状では、自転車奨励もかえって危険になる」─など。

 また、歯科医が区民6千人に一人しかいないといわれる旭区だけに「保健医療」も関心の的。「総合病院を速やかに造って欲しい」「第二保健所も必要だし、休日・夜間診療所の開設もお願いしたい」「しかし、医師会や歯科医師会は〝圧力団体〟となって反対しているのではないか」─と区民の声が出ると、高梨重武会長がすかさず「地域病院は既に衛生局と計画を練っており、休日・夜間診療所も近いうちに実現したい。いずれにしても現在、看護婦など従業員不足という大きな問題がある」と答えた。

 さらに「教育」については、「市立幼稚園が必要」「心身障碍児(者)教育の充実」「区単位の教育行政があってもよい」─など、現場教師を含めた11人から発言があった。

一人一人が区長・市長

こうした〝区民討論〟を基に、助言者の関力県立栄養短大教授(旭区民)は、最後の〝まとめ〟の中で「おぜん立ては区だが、主催者は私たち自身だ。区をよくするために積極的に参加・発言し、行政に反映させよう。予定ではあと一回だが、区民からの要望があれば私たちの主催で何回でも続けたい。次回は単に要望だけにとどまらず、〝自分ならこうしてみたい〟という、一人一人が区長や市長になった発言がほしい。そこに初めて本当の市政参加があるはず」というと、割れるばかりの拍手が鳴り響き、市内のトップを切った〝区民参加集会〟は、成功のうちに午後四時四十分に終わった。

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