市長へ意見や質問 活発に3時間半 神奈川新聞1967年10月23日
市長と市民の対話を通じて住みよい横浜市づくりを─という「一万人市民集会」が、22日午後1時から横浜市中区の横浜文化体育館に美濃部都知事ら来賓のほか市民約6千人を集めて開かれた。飛鳥田市長が第1回当選いらい掲げてきながら市会の承認が得られなかった市民との対話構想を「市長と市民の会」など市長支持団体が自主的に実現しようと準備を進めてきたもの。形は違っても実質的な一万人集会で、集まった市民たちは教育、道路、公害などの身近な問題を生でぶつけて市長直接の回答を得るなど午後4時半ごろまで熱心な対話が続けられた。
美濃部都知事も出席
この集会は先月23日から「教育文化と家庭生活の問題」などテーマごとに4つの分科会を開いてきた総決算だが、各団体への呼びかけが功を奏して日曜日の午後にもかかわらず2階もある広い会場はほぼいっぱいの盛況。この中を美濃部都知事のほか東京武蔵野、国立、鹿児島、釧路など革新市長ら来賓たちがスポットライトに照らされて入場、横浜市歌の合唱があって会ははじまった。会は二部に分けられ、第一部ではまず主催者を代表して北村清之助一万人集会実行委代表が挨拶した後、同実行委事務局側から、これまで野党の反対で市主催の集会が四度否決されてきたいきさつが述べられた。さらに来賓代表として美濃部知事が立ち「このようなすばらしい催しを東京でもまねたい。みなさん一人ひとりの考えをぜひ聞かせてほしい」と励ました。
この集会の中心テーマである第二部の「市長と市民の対話」では、これまでの分科会で討論されてきた集約的な意見と一般参加者の自由討論という二段構えの方法で始まり約20人の人たちから会場真ん中にひとり座った飛鳥田市長に2時間にわたり訴え、意見、要望が盛んに飛び出した。発言内容は「水道料金が上がるというが本当か」「身障者対策にもっと力を入れてほしい」「市電がなくなったあとの市の道路対策は」といったものから、「基地返還」「公害」など質問は幅広い分野にわたった。
「団地に保育園がほしい。市の力でやっと公園側から土地を出してもらったが将来、保育園建設には用地代を含めて予算を計上するつもりはないか」という戸塚の主婦の質問には、「去年だけで16億円もの用地代を団地の学校、保育園用地代につかったがまだ足りない。東京方面からの流入者の団地ができるたびに市が用地代をつかうというのは無理で、今後造成者側に土地を提供させるなどみんなと一緒に力を尽くしたい。それでもだめというなら用地代を考えましょう」など飛鳥田さんの熱のある答弁ぶりに拍手もわいた。
質問希望者が続出したが午後4時過ぎ〝対話〟を打ち切って「市民宣言」を採択してから、「幸せなら手をたたこう」の全員合唱でなごやかに総会を終了した。
参加したのは中年の人たちが多かったが、意見は〝市政に直接参加〟するというにふさわしい活気で、対話に先立って分科会報告をした助言者の長洲一二横浜国大教授も「これまでの陳情というのは市長と一部の人の密室の会話だったが、これが公開の広場の声に出されるようになったのは画期的なこと。都市が大きくなるにつれて人間不在の政治になりやすくなるが、こうした集会によるパイプを通じて市民みんなで悩みをなくして行きたい」と言っていた。